IT・ビジネス知識
元SAP社員が語る 「SAPコンサルタントの将来性」
世界各国で導入されているERPパッケージのひとつ「SAP」。本記事ではSAP製品の導入検討・要件定義・実装等に携わる“SAPコンサルタント”の将来性について、SAPジャパン社にて17年間務めていたコンサルタントの視点で述べさせていただきます。
1.SAPコンサルタントとは?
1.幅の広さと働き方の多様性に驚き「SAPコンサルタントの職種/働き方」
SAPコンサルタントとは? まずは、そもそもの「SAP製品の概要」を述べさせていただいたのち、「職種/働き方」という視点で、その多様性について触れたいと思います。
・SAP製品の概要
SAP製品は企業の基幹業務システムであるERP製品(財務会計・管理会計・販売・購買・生産・人事領域)を筆頭に、顧客管理製品、アナリティクス製品等の製品をリリースしています。
下図はSAPジャパン社の公式ホームページに公開されている製品群と業種別ソリューションですが、これを見ただけでも製品領域は多岐にわたることが分かると思います。
・SAPコンサルタントの職種と働き方
SAPコンサルタントの職種と働き方で整理してみます。
もう少し区分けすると、、、上図の “業務コンサルタント”といっても、以下のように財務会計・管理会計・販売管理、、、といった領域で細分化されますし、“アプリケーションコンサルタント”も同様です。
このように、コンサルタントの職種は様々です。また、昨今では働き方が多様化しており、SAPに関連する仕事ではフリーランスコンサルタントが数多く活躍していることも特徴です。また、ひとつの職種、業務領域に精通すると、属している組織に関係なく、活躍する場が多くなります。フリーランスで導入プロジェクトを数多く経験していく人も多いことも特徴です。
2.SAPコンサルタントの年収
さて、SAPコンサルタントの気になる年収ですが、これもまた幅広いものとなります。裏付けできるデータはありませんが、筆者の知る範囲でのイメージ情報として捉えて頂ければと思います。
●年収レンジ:500万円~1500万円
この情報を見て、どのようにお感じになりますか? “これじゃ分からない”との反応が聞こえてきそうです。では、この年収の差はどのように発生するかを以下で述べさせていただきます。
年収レンジとスキルのマッピング
年収が高い人の特徴
その1
一つの職種・領域だけでなく、複数をこなせる。 もしくは特定領域において深い知識を保有している。
例:業務コンサルタントとして会計スキルと販売/在庫などのロジスティックスキルを保有し、チームリードを実施できる。 または、SAP HANAなどの最新情報を有し、希少価値のある領域を担当できる。
一つの職種・領域だけでなく、複数をこなせる。 もしくは特定領域において深い知識を保有している。
例:業務コンサルタントとして会計スキルと販売/在庫などのロジスティックスキルを保有し、チームリードを実施できる。 または、SAP HANAなどの最新情報を有し、希少価値のある領域を担当できる。
その2
SAPプロジェクトにおいて、プロジェクトマネジメントを実施できる。
例:プロジェクトマネジメント知識の習得と、複数領域・複数製品の経験・チームリーディング経験を重ね、クライアント交渉やマルチベンダー管理を含めたプロジェクトマネジメント業務ができる。
SAPプロジェクトにおいて、プロジェクトマネジメントを実施できる。
例:プロジェクトマネジメント知識の習得と、複数領域・複数製品の経験・チームリーディング経験を重ね、クライアント交渉やマルチベンダー管理を含めたプロジェクトマネジメント業務ができる。
その3
上述「その1」や「その2」に加え+αのスキル・経験を保有している。
例:プロジェクトマネジメントスキル×SAP全般知識×SAP特定領域知識×英語力を保有している。
逆の考え方として、SAPコンサルタントといっても、深い専門性や常に最新の技術情報を保有していない限り、ひとつの職種・領域だけでは高年収は狙うことは難しいと言えます。上述「その1」や「その2」に加え+αのスキル・経験を保有している。
例:プロジェクトマネジメントスキル×SAP全般知識×SAP特定領域知識×英語力を保有している。
3.資格や認定は必要?
資格や認定は、是非、取得されることをオススメします。とはいえ、先にのべたようにSAPコンサルタントの幅は多岐にわたるため、以下の例のようにSAP認定資格と、その他資格を“組み合わせ”して取得をされることをオススメします。
※SAP認定資格は、先に述べた職種や業務領域によって様々あります。詳細はSAP社ホームページをご覧ください。
2.製品を知り尽くした元社員が語るSAPコンサルタントの“これから”
さて、SAPコンサルタントとしてSAPジャパン社で17年務めたSAPコンサルタント経験者の目線で、SAPコンサルタントの“これから“(=将来)について、述べさせていただきます。まずは現在とこれからのSAP製品のイメージを持っていただいた上で、ご自身の将来をイメージいただければと思います。
1.これまでのSAP製品
これまでのSAP製品について、「製品軸」と「売上推移」という視点で整理してみたいと思います。
・ERP:企業規模を問わず基幹業務システムをカバー
ERPとしては、1972年に大企業向け製品R/3初期バージョンがリリースされて以来、R/3 3.x R/3 4.x, ERP6.0といった形で、バージョンアップ・拡張を重ね、現在では「S/4 HANA」が最新バージョンとしてリリースされています。中堅・中小企業向けERPとしても、Business ByDesignがリリースされています。
企業規模の側面でも、基幹業務パッケージとして、全方位を固める方針であると理解してよいでしょう。
・ERP以外:基幹業務システム以外にも多様な業務システムをカバー
自社開発やM&Aにより、多様な業務領域に対応できる製品ラインアップ拡充が図られています。
プレス発表にてSAPジャパン福田社長は2016年度の各事業の成長率を、グローバルと日本で対比して提示。
・日本:6年連続で売上最高額を更新、8億2500万ユーロ(約1000億円)の売上を達成
・クラウドの新規受注が139%増
・ERPライセンスが14%増と6年ぶりに2ケタ増(グローバルでは1%の成長に留まっている)
2.これからのSAP製品
SAP製品がこれからも普及しなければ、SAPコンサルタントの出番は将来減ってきてしまいます。では、SAP製品は今後も普及・発展するのでしょうか?
2018年6月に実施された、SAP社主催イベント「SAPPHIRE NOW」の情報の概要を提供させていただきます。当該イベントは、SAP社が1年に1度開催するイベントで、同社の製品戦略や新製品の発表が行われます。SAPコンサルタントであれば、ぜひ出席したいイベントですが、開催場所が米国フロリダ州オーランドということもあり、日本からの出席はなかなか難しいですね。
SAPPHIRE NOWキーノートのメッセージ抜粋
1.SAP HANAを中核としたData Management SAP HANA(データベース)を核とした、インメモリコンピューティングによる以下の実現。 ・”超リアルタイム” ・”ビッグデータマネジメント”の実現 ・オンプレミス環境、クラウドプラット環境(SAP社クラウド・他社クラウド双方含む)および、その組み合わせ環境下での連携管理 スライド1.SAP HANAを中核としたData Management 2.インテリジェントエンタープライズの実現 ・インテリジェントエンタープライズ(=従業員がより価値の高い成果に集中できるように人工知能 (AI)、機械学習 (ML)、モノのインターネット (IoT)、アナリティクスなどの最新テクノロジーを活用する企業のあり方)実現のために、SAP社がもつ各種フレームワークを1つにまとめようとしていると発表された。 スライド2.インテリジェントエンタープライズの実現 3.SAPクラウドプラットフォームの推進 ・SAP社が提供するクラウドプラットフォームを今後も普及・推進していく方針であり、すでに9500社以上のカスタマーが同プラットフォームを採用。 スライド3.SAPクラウドプラットフォームの推進 SAPPHIRE NOWにおける新製品発表
・「SAP C/4 HANA」の発表 SAP社が“次世代CRM”と呼ぶ新製品、「C/4 HANA」のリリース発表 データベースをHANAとしている 以前の同社ブランド“Hybris”を基に開発された後継製品で、実質的に今後”Hybris”ブランドは同社としては使用しないと言っている。 スライド4.SAPPHIRE NOWにおける新製品発表 結論:SAP製品は今後も普及・発展するのか? さて、前述のSAPPHIREキーノートはいかがだったでしょうか?SAP社は ERPを代表とする業務パッケージに留まらず、昨今のITトレンドであるAI/ML/IoTには“Intelligent Enterprise”というフレームワークでさらなる発展・普及を予定しており、クラウドについても売上推移が順調にましているから、まだまだSAP製品またはSAPクラウドサービスは普及・発展する可能性があると言って良いのではないでしょうか。 出典(スライド1~4):SAP Sapphire 2018
1.SAP HANAを中核としたData Management SAP HANA(データベース)を核とした、インメモリコンピューティングによる以下の実現。 ・”超リアルタイム” ・”ビッグデータマネジメント”の実現 ・オンプレミス環境、クラウドプラット環境(SAP社クラウド・他社クラウド双方含む)および、その組み合わせ環境下での連携管理 スライド1.SAP HANAを中核としたData Management 2.インテリジェントエンタープライズの実現 ・インテリジェントエンタープライズ(=従業員がより価値の高い成果に集中できるように人工知能 (AI)、機械学習 (ML)、モノのインターネット (IoT)、アナリティクスなどの最新テクノロジーを活用する企業のあり方)実現のために、SAP社がもつ各種フレームワークを1つにまとめようとしていると発表された。 スライド2.インテリジェントエンタープライズの実現 3.SAPクラウドプラットフォームの推進 ・SAP社が提供するクラウドプラットフォームを今後も普及・推進していく方針であり、すでに9500社以上のカスタマーが同プラットフォームを採用。 スライド3.SAPクラウドプラットフォームの推進 SAPPHIRE NOWにおける新製品発表
・「SAP C/4 HANA」の発表 SAP社が“次世代CRM”と呼ぶ新製品、「C/4 HANA」のリリース発表 データベースをHANAとしている 以前の同社ブランド“Hybris”を基に開発された後継製品で、実質的に今後”Hybris”ブランドは同社としては使用しないと言っている。 スライド4.SAPPHIRE NOWにおける新製品発表 結論:SAP製品は今後も普及・発展するのか? さて、前述のSAPPHIREキーノートはいかがだったでしょうか?SAP社は ERPを代表とする業務パッケージに留まらず、昨今のITトレンドであるAI/ML/IoTには“Intelligent Enterprise”というフレームワークでさらなる発展・普及を予定しており、クラウドについても売上推移が順調にましているから、まだまだSAP製品またはSAPクラウドサービスは普及・発展する可能性があると言って良いのではないでしょうか。 出典(スライド1~4):SAP Sapphire 2018
3.寿命の長い/高単価のSAPコンサルになるために心がけること
・一般論として
大企業でコンサルティングをしていると、80%以上の確率にて何らかの形でSAP ERPが基幹業務として導入されています。 SAP ERPは今後S/4 HANAに移行する必要があり、こういったニーズや、その他のSAP製品についても今後の発展が期待できます。さらには、日本に本社があり、海外に拠点を持つ大企業においては、グローバル化が加速している昨今の状況をふまえ、SAPシステムの海外展開プロジェクトが推進されています。
こういった状況の中で、SAPコンサルタントとしてどのような付加価値を出せるかが、寿命の長いコンサルタントになる秘訣だと思います。
・自分の付加価値=長寿命・高単価を狙える
キーワードは?というと、やはり、SAP+αのスキルになると思います。IT業界・コンサルティング業界共通していえることだと思いますが、グローバル化・クラウドというったキーワードに加え、AI・IoTといった先端技術もしくは、プロジェクトマネジメントいった職種は、今後も需要が期待されます。
平たく言うと、AIには置き換えられない何かを自身で担うことが長寿命・高単価につながると考えられます。 もし、読者の皆さんのなかで、「私は会計が得意だけど。。。」、「私は最先端のSAP製品技術を追っているけど。。。」という方がいらっしゃれば、是非、“+αの何か“を見つけられることを強くオススメします。 グローバル化に伴う「英語」でも良いでしょうし、エンドユーザー(お客様)が納得するようなプロジェクトマネジメントスキルでも良いでしょう、もしくはクラウドを前提とした戦略策定スキルでも良いと思います。 常に、何らかの自身の成長を目指すことで、将来を開拓する可能性が高まることは間違いないといって良いでしょう。
3.まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。SAPコンサルタントの将来性を以下のようにまとめさせていただきます。
・幅の広さと働き方の多様性が期待できる
前述したように、一言でSAPコンサルタントといっても、その幅は広く、働き方も正社員・フリーランスといった選択ができます。
・自然に最新テクノロジーに追従できる
SAPコンサルタントとして活動すると、AI/IoT/クラウドといった最新テクノロジーに触れる機会が多くなることが期待できます。つまりは、スキルアップが図れるということですね。
・長寿命・高単価を狙える
もちろん自身の努力によるところが重要ですが、長寿命・高単価を狙えるチャンスは多くあります。前述した+αの何かを身に着けることでよりそのチャンスは広がると思います。
執筆者:金栗 一憲
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