ビジネスチャットはメールに代わるツールになるのか?
普段皆さんはチャットツールを利用されますか?プライベートであれば、LINEを筆頭に何らかのツールを利用されている方も多いかと思います。 では、ビジネスの場ではどうでしょうか?政府の掲げる「働き方改革」の推進に伴って、最近ビジネスチャットを導入する企業が増えています。今回は、ビジネスチャットのメリットやデメリット、また外国と比較した際の日本におけるビジネスチャット利用状況等から、今後のビジネスチャットの動向を考察してみたいと思います。
1.ビジネスチャットについて
そもそもビジネスチャットって?LINE等を仕事の場で使っているだけ?と思う方もいらっしゃるかと思いますので、まずはビジネスチャットに関して簡単に説明させて頂きます。
1.ビジネスチャットの概要
ビジネスチャットはその名の通り、ビジネスの場で利用する事に特化したチャットツールです。対面や電話等、直接の会話以外でコミュニケーションを図る場合、メールを使う事は多いかと思います。ビジネスチャットは、メール程堅苦しくなく、且つスピーディーにコミュニケ―ケーションを図れるツールとして注目を浴び、近年導入する企業が増えてきており、その市場規模は、2017年に60億円(前年の3.5倍)、 2021年時点では、130億円にまで拡大すると予測されています。(富士キメラ総研社調べ) また、ビジネスチャットは1対複数人でのやり取りに長けております。メールでもToやCcに複数人を入れる事で1対複数人でのやり取りが可能ですが、Ccで送られてきたメールに対して自分事として捉え、自ら返信をする人はどれ程いるでしょうか? 例えば、同じ部署の偉い人がToに入っているからCcの自分は返信しないでおこう、といった心理的障壁が比較的大きいメールよりも、障壁の少ないチャットの方がコミュニケーションを円滑にし、尚且つスピーディーに意思決定をする事が出来ます。そんなビジネスチャットですが、まずはメリットやデメリットに関して詳細を見ていきたいと思います。
2.ビジネスチャット導入におけるメリット
3.ビジネスチャット導入におけるデメリット
4.世界に見るビジネスチャットの導入状況
(出展:総務省 「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018) – ビジネスICTツールの導入状況(国際比較)) 上記グラフは、総務省が発表しているビジネスICTツールの導入状況です。 このグラフからも分かる通り、ビジネスチャット、社内SNS、テレビ会議・ビデオ会議のいずれも他国と比較して、日本は導入が進んでいない事が分かります。 ビジネスチャットに関しては、他国が半数以上の企業で導入しているにも関わらず、日本はその半分にも満たない23.7%の企業しか導入しておりません。 日本企業において導入が進んでいない背景としては、セキュリティ面の不安や、管理・運用対象が増える事への懸念、そもそもビジネスチャットの必要性が不明確といった点が挙げられます。 また、日本では社内SNSやチャットの導入が他国に比べ進んでいない背景として、国民性も影響していると考えられます。 日本は他国に比較すると、ビジネスとプライベートの区別が曖昧になりやすい傾向があり、それらのツールを導入する事でより一層公私混同するリスクが増える事を懸念しているのではないでしょうか? テレビ会議やビデオ会議のように、出張費を抑える事が出来る等の直接的に見えるメリットがない事も関係しているかもしれません。 (注釈: 上記グラフの社内SNSは、チャット機能を内包するビジネス用途のSNSツール、チャット(インスタントメッセンジャー)は、チャット機能に特化しており一部ビデオ通話等を内包するツール、テレビ会議・ビデオ会議は、SNS機能やチャット機能を内包しない遠距離会議用途のツールを指します) (出展:総務省 「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018) – ビジネスICTツールの利用状況(積極的に使っている人の割合、国際比較)) 上記グラフは、ビジネスICTツールを積極的に利用している割合の国際比較を表したものです。 上記のグラフから、日本は他国に比較し積極的に利用している割合も少ない事が分かります。背景として、やはり日本ではメールを主軸として利用しており、社内SNSやチャットツール等は、あくまでコミュニケーションを図る上で補助的な立ち位置である事が推測されます。 (注釈: 上記グラフの社内SNSは、チャット機能を内包するビジネス用途のSNSツール、チャット(インスタントメッセンジャー)は、チャット機能に特化しており一部ビデオ通話等を内包するツール、テレビ会議・ビデオ会議は、SNS機能やチャット機能を内包しない遠距離会議用途のツールを指します) (出展:総務省 「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018) – ビジネスICTツールの導入・利用状況と社内コミュニケーションとの関係(日本)) 上記グラフは、ビジネスICTツールを導入・利用状況と社内コミュニケーションの関係を表したものです。 社内SNSやビジネスチャット等のツールが導入されているか否かでは、コミュニケーションの充実度合いにあまり大きな差がありませんが、ツールを積極的に利用しているか否かでは、コミュニケーションの充実度合いに開きがあります。 この事より、ビジネス用途のコミュニケーションツールが導入されているだけではコミュニケーションを円滑にする事にはあまり影響を与えておらず、積極的に利用する事でその成果を発揮している事が分かります。 尚、いずれかのツールを積極的に利用している場合と、どのツールも積極的には使っていない場合とで、後者の方がコミュニケーションを十分に取れていると回答した割合が若干高くなっています。 こちらの背景として、そもそもツールを積極的に使う必要がないほどコミュニケーションを円滑に図る事が出来る職場環境が整っている場合や、全てのコミュニケーションはメールでも十分である(ビジネスチャット等のツールの必要性を感じていない)場合が一定数存在している事が分かります。
5.日本企業におけるビジネスチャットシェア状況
(出展:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 「大手企業のビジネスチャットツール導入実態調査 ビジネスチャットツールの導入状況」) 上記グラフは、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社が調査した、大手企業のビジネスチャットツール導入実態調査にて、「企業として公式にチャットツール、ビジネスチャットルールを導入していますか」という質問に対する回答です。 2017年2月時点の結果ですが、7割以上の企業が導入しておらず、依然としてメールだけで仕事をしている企業が大半である事が分かります。 (出展:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 「大手企業のビジネスチャットツール導入実態調査 導入しているビジネスチャットツール」) 上記グラフは、会社で公式にビジネスチャットツールを導入している企業が、どのツールを導入しているのかを表しているものです。 主に業務でPCを利用する企業ではSkypeが最も使われており、主に業務で携帯/タブレットを利用する企業ではLINEが最も使われています。 PCを使用する企業と、携帯/タブレットを使用する企業で利用状況に少し乖離があるツール(LINE、facebook、LINE WORKS、chatwork)に着目してみると、主に携帯/タブレットを使用して業務にあたっている企業は、オフィス内ではなく外出先でビジネスチャットを利用する事が多い為、スマートフォンでの利用に慣れているツールやSNSとして情報発信する事を目的にしたツールがより利用される傾向にあるものと想定されます。 SkypeやMicrosoft Teamsのようなほぼ同水準で利用されているツールに関しては、テレビ・ビデオ会議での利用が多い点や、機能が多くビジネスチャットとしてだけではなく、プラスアルファ(ファイル共有やスケジュール管理等)の機能を利用しているものと想定されます。
2.代表的なビジネスチャット6選
前項までで、ビジネスチャットがどのようなものか、また日本企業のビジネスチャットに関する現状について記載させて頂きました。本項では、数あるビジネスチャットのうち代表的なものに関して、機能の概要や特徴等を見ていきたいと思います。
1.chatwork
2.slack
3.LINE WORKS
4.Microsoft Teams
5.workplace by facebook
6.InCircle
3.まとめ
タイトルでもある「ビジネスチャットはメールに代わるツールになるか」という観点について、現時点では、まだビジネスチャットがメールを代替するツールではないと考えます。その理由としては、以下2点です。 ・ ビジネスチャットでは、同じツール同士でしかチャットの送受信が出来ない為、社外ユーザとのコミュニケーションを図る事が難しい ・ ビジネスチャットでは、メッセージ総量が多くなり過去のログを検索する事が比較的困難な傾向にある為、重要事項や決定事項等の情報を証跡として扱う事が難しい 一方で、社内ユーザだけでのコミュニケーションを図るツールとして考えると、とても有効に活用する事ができ、メールよりも多くのメリットを享受出来ます。その為、ビジネスチャットとメールはそれぞれ目的(社内コミュニケーションはビジネスチャット、社外コミュニケーションはメールにする等)を定めて適切に使い分ける事が重要と考えます。 尚、今後ビジネスチャットは更に機能を追加しより利便性の高いツールになると予想されます。現時点ではメールに代わるツールにはならない、という結論ですが、上記で記載させて頂いたデメリットを解消する機能が追加される事で、今後数年のうちにビジネスの場におけるコミュニケーションツールのスタンダードがメールではなく、ビジネスチャットになる可能性も十分に考えられます。
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